スポーツは人間力を向上させる!?

今回は現在大学院で学んでいる『スポーツ社会学』でのレポートの一部分を皆さんに紹介したいと思います。賛否両論あるとは思いますが、私の今の思いです。 スポーツを樋口聡氏は次のように定義している。             『スポーツとは、日常生活とは異なる意味連関をもつ 特殊な状況の中で(遊戯性)、人為的な規則に基づき(組織性)、他者との競争や自然との対決を含んだ(競争性)、身体活動(身体性)である。スポーツはその構造上、必然的に競争という性格を含んでいる』  今回この中でもこの競争性、そして東洋的身体論での精神性に重点を置き、『スポーツは人間力を向上させる』というテーマでスポーツについて考えたい。             まず第一に、競争性である。一時期非常に増えた「競争のない運動会」に対しての私の感想は、『意図は理解はできるが、やり方には共感はできない。競争から学べることが多くある。しかし、勝つことだけでなく負けからも学ばせることが大切』である。 理由は次の3つである。                                                     ①進学・就職(受験)、社会人生活そのものが、ほぼ競争の上に成り立っており、遅かれ早かれ競争と直面することになる。  ②競争性を持っているからこそ、スポーツである。 ③子供にはそれぞれの個性があり、競争するからこそ個性を活かし育むことができる。人間的な成長のためには競争において勝敗から学ぶことも大切。       永井洋一氏は著書で、『子供はまだ精神的に未成熟で、勝敗という結果からそれ以上の何かを見いだす力は十分に育ってはいません。だから子供は、勝敗という結果だけを見つめ、勝って嬉しく負けて悔しいという感情をストレートに表します。子供は大人以上に、勝利に強くこだわっています。もちろん、そのこと自体は自然なことで、決して大きな問題ではありません。問題は、そうした子供の周囲にいる大人たちの接し方です。』と書いている。 批判的なものの見方をすると、この「競争のない運動会」は最初から子供たちを傷つけないという大義名分のもと、教師たちが無難な策をとっているように私は感じる。 大事なのは“競争をさせないこと”ではなく、永井氏の言葉にもあるように、“大人の接し方”である。つまり、スポーツ活動において安易に競争を回避するのではなく、勝敗から発生する子供たちの感情を受け止めながら、そこから学ばせるのが我々大人(先生・指導者・親)の役割ではないだろうか。 テリー伊藤氏があるテレビ番組でコメントした『「弱さとか、もろさとかが、恥ずかしくないよ」という教育が必要である』と私は思う。そのためにも日頃から(特にスポーツ活動において)、我々大人が“優勝劣敗”の意識を捨て、本気で子供の人間力向上を念頭において誠実に接することが重要である。  第二に、精神性である。剣道界で有名な栄花直輝さんは「打って反省、打たれて感謝」という言葉を掲げ、勝とうとする心の未熟さを反省し、結果を求めずに無心に闘う心をぞうきんがけという“修行”を通して養い勝利する。その逃げない姿勢に私は深く感動した。 先日のソチオリンピックが終わった後、松瀬学氏はコラムで“なぜ五輪メダリストは礼儀正しいのか”というテーマで次のように書いていた。 『ソチ五輪の日本代表選手は総じて礼儀正しかった。コトバもしっかりしていた。とくにメダリストは。日本選手団の橋本聖子団長はこう、言った“人間力なくして競技力向上なし”をテーマに戦ってくれました」と。金メダルを獲得したフィギュアスケートの19歳、羽生結弦選手はもちろん、スノーボード・銀メダルの15歳の平野歩夢選手、銅メダルの18歳の平岡卓選手もきっちりしている。日本選手団最年少だった平野選手はまだ中学3年生だ。全日本スキー連盟(事務局・広報担当)の土谷守生さんは「一般の方からも、“非常に礼儀正しくて気持ちがいい”とのお褒めの電話をもらっています。こんなの初めてです」とうれしそうに説明する。』 特にスノーボードに関しては、ヘッドコーチの上島氏が、前回のバンクーバー五輪で国母和宏選手がラフな服装や言動で世間から批判をあびたこともあり、“礼儀ができていない選手は競技をしてもダメだ”という考え方で服装や言葉遣いを大事にしてきたそうである。 栄花さん、ソチのメダリストたちが共通しているのは精神性である。        礼儀作法を徹底し、道徳性、人間力が向上し、その姿勢が競技力向上、そして最終的にメダルにつながったと言っても過言ではないだろう。これはまさしく東洋的身体論における『心身一如』である。  ダニエル・ゴールマン(1996)もベストセラーになった著書『EQ~こころの知能指数』のなかで、「EQは教育により高めることが可能とされる」と言っている。また、高木(2008)らは、現役の大学生アスリートを対象として、情動的知能検査(EQS)を実施し、一般学生と比較した結果、全てのEQS項目において有意に高い値を示し、スポーツ活動が人間力向上に及ぼす効果を実証している。  以上のことから、人間(特に若者)はスポーツを通して競争することにより、また礼儀作法の徹底、道徳性の向上により、数多く経験と学びを得て人間形成していく。 つまり、スポーツは人間力を向上させるのである。   参考文献: 1)永井洋一,2004,『スポーツは「良い子」を育てるか』,日本放送出版協会 2)ダニエル・ゴールマン,1996,『EQ~こころの知能指数』,土屋京子訳,講談社 3)高木英樹・緒方ひとみ・真田 久(2008)大学生アスリートの持つ人間力の特徴-情動知能尺度(EQS)から見た-考察-,大学体育研究,3023-33

4)松瀬学,なぜ五輪メダリストは礼儀正しいのか,http://bylines.news.yahoo.co.jp/matsusemanabu/20140226-00033020/、(参照)2014-2-26

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